内容
<トレッサ横浜の概要〜開発の狙いと施設としての特徴的な取り組み>
2007年12月北棟がオープン、2008年3月南棟もオープン、現在220の店舗で構成。
2010年7月29付け繊研新聞(ファッション専門誌)に紹介。
駐車台数は平日2700台+休日450台の計3150台の駐車スペースを確保。
年間1100万人の来場者目標に対し、08Yは1068万人、09Yは1263万人で前年比120%を達成。
トレッサのある師岡町の名前の由来は〜たくさんの丘)
Tressaの名前は、人と地域、横浜市とリヨン市、人と車をつなぐという意味からフランス語の結ぶという意味
昭和38年にトヨタの物流センターとしてこの地に進出(当時は工場地域)。
どうしたら地域に愛され貢献できるか環境に配慮をした商業施設とした。
横浜市の「緑の丘構想」と壁面緑化を取り入れ、昨年国土交通大臣賞を受賞。
施設内の環境設備では「氷蓄熱システム」、「NAS電池システム」を採用してCO2の削減を図っている。また、飲食店からの排水をバイオ浄化してトイレの洗浄水として再利用をしている(中水利用)。
「CASBEE横浜」の評価でAランクを取得。
「クルマ」が一番美しく見える都市風景の写りこみを意識した。
横浜市の姉妹都市であるフランスのリヨン市を選定。リヨン市は絹織物の産地でもあり、織物と言えば織機であり、織機と言えば豊田佐吉の自動織機、トヨタへと関係してくる。
豊田佐吉、弟の平吉、息子の喜一郎、孫の現在の名誉会長の章一郎が、リヨン市を訪問している。
リヨン市は新市街地区と旧市街地区から構成されており、トレッサ横浜も北棟を旧市街地、南棟を新市街地としてイメージし、再現している
館内の装飾にはマンホールやライオン等、リヨン市から本物を取り寄せている。
ライオンの像は、リヨン市には60体あって61体目をトレッサ横浜にもってきた。また、貴族の紋章のほか、だまし絵など実際にリヨン市で使われている看板など本物を持ってきた。
トヨタがやるからには渋滞を極力なくす努力をした。また、渋滞が発生してもトレッサ横浜の外に出さないようにするためにどうしたらよいか、また発生した渋滞を施設内部に留めるためにはどうすればよいかを事前に何回もシミュレーションをした。
渋滞解消の方法として施設への出入り口数を7ヶ所と多くすること、駐車場を全日無料とすることでバーの開閉をなくし駐車場への入出庫をよりスムーズにした(バーの開閉には一台当たり15秒を要する)。
施設内での交通は横浜市の左折IN、左折OUTの考えを取り入れ、敷地内に4Kmのスカイウエイ(敷地内道路)を建設して渋滞を極力外に出さないようにしている。
駐車場の全日無料化にたいするお客様の声として「ありがたい」との言葉を頂いている。有料の場合、(金額により無料時間があるため)後5分しか時間がないとか、後500円の買い物が必要だとか・・・のストレスがなくなった。全日無料化は来店への敷居を低くすることに役立っている。
ロードサイドでは、短時間車検など、極力待ち時間を短くする工夫をしているが、当施設ではその間ショッピングが出来る。逆にトレッサ横浜では車検が1時間でできるが、お客様がクルマの引き取りに来ないため在車(スペース)の悩みがある。つまり、ショッピングの合間にクルマを点検することができるためお客さまにとってメンテナンスの時間が「ゼロ」と同じである。
<地域密着の取り組み~中学生職業体験・小学校社会科見学、イベント発表の場づくり>
子供がクルマに魅力を感じるようにしている。
北棟一階にある工場見学ではクルマを下から見えるような工夫など、子供たちに喜ばれている。子供たちに車の病院だといって、説明することによってメカニックも注目を浴び、結果として従業員のモラルアップにつながっている。
地域に密着し、目指しているのは街づくり。
トレッサ横浜から3Km圏内に33万人、5Km圏内では88万人の人が住んでおり、足下人口がとても多い。
人口構成は30代が一番多く、ターゲットは30代ミセス。ただ、その親の高齢者も多い。またその子供も多く、10歳より5歳。5歳より、0歳が多く、人口が増加している地区である。北棟はアクティブライフ館で特に男性に楽しい所、南棟は日常生活を快適にする店舗を配置している。
南棟一階には日常使いのスーパーや食品、土日でも営業してくれているクリニック(小児科を含め6つのクリニック)や郵便局がある。またやキッズタウンとして子供がモノづくりを楽しめる店舗も配置している。日本初のタミヤプラモデルファクトリーや自分で作って入れるでこぼこモータースなどもある。
住宅もトヨタホームを販売をしているがおかげさまで好評です。
中学生の職業体験として現在9校300名が参加。テナント殿にも協力をいただいて進めている。スタッフも生徒の新しい視点での意見や感謝の言葉をもらい、モラルアップにつながっている。
子供が働く姿は親にとっても喜びで親子のコミュニケーションが多くなった。お店にも良い影響を与えている。
8月までに200回の大小イベントを開催した。JA横浜と毎月第一土曜日に朝市を開催しているが取れ立ての新鮮な野菜の香りが館内に充満している〜地産地消。
平日も小さなイベントを開催しておりお客様には好評をいただいている。
<お客様とのコミュニケーション〜データで把握、カイゼンのPDCA>
09年度クレーム・要望で渋滞に関する要望が08年度126件に対し09年度は8件と減少。一日の入庫台数が1万台をオーバーする日が続くなかでクレーム件数が少なくなってきている。
07年11月より毎朝ミーティングを実施している(現在も継続3年目)。昨日の問題・課題を今日どうすればよいか、356日PDCAを回している。
過日、トヨタの消費生活アドバイザー視察が有り指摘を受け改善をおこなった。例えば案内サインを縦の視線から見えるだけでなく床にも表示をするように改善をした。
お客様の要望に応え店舗同士のコラボレーションにも取り組んでいる(コージコーナーで買ってきたケーキをTULLY’Sでコーヒーと一緒に頂くことができるようにした
来場者数も17ケ月連続で前年超え、売上も12ケ月連続前年オーバー。
<スタッフとのコミュニケーション〜目標の共有化と情報の共有化>
毎月スタッフに状況説明を書面で配布して目標と取り組みの情報共有化を図っている。
社内にフットサルのチームを結成するなど、いろいろとイベントを組んで楽しんでいる
<Q&A>
Q: 入場者のカウント方法はどのようにしていますか?
A:
1階出入り口7ヶ所にセンサーで入場した人と立体駐車場の駐車台数から計算。この方法は開店当初より方式を変えていない。8月28日に累計来場者数3000万人を突破。
北棟3周年イベントとして3333万3333人目はいつかのクイズを企画中。・・・12月初めくらいか?
Q:セキュリティーの問題、対策はどのようにしていますか?
A:
安全は一番の重要事項。オープン前に全役員が駐車場他1千箇所以上の場所をチェック。リスクマネージメントとして保険会社からのチェックなどおこなった。それでもオープン後にクレーム・要望があり改善を行っている(落下防止の手すり設置、高温注意表示が有っても触れてしまえるので、柵の設置等)。
地域のひとたちが防犯パトロールを実施してくれている。悪い人のたまり場にならないよう皆が気配り、目配りしている。
監視カメラにより犯罪防止や警察の立ち寄り場所としてパトカーの駐車スペースを2ケ所設置している。
Q:施設・店舗内でお客様がケガをした場合、初動の対応はどのようにしているのか。連携のフローはあるのか?
A:
事故が発生した場合、まず防災センターに一報を入れ、警備担当とスタッフの複数で対応をしている。幸い施設内クリニックが有るので救急車の要請などは医師の判断を仰ぐことができる。
救急車にはできるかぎりスタッフが付き添うようにしている
什器の件はスタッフが危ない個所をチェックしておりパッキンをいろんな所につけている。また、テナント殿に対しアドバイスを行っている。
Q: 駐車場で最初は無料でも後で有料にすることはないのか?
A:
今後も無料。駐車場には開閉バーが無く新たに設置には投資がかかるし、基本は渋滞対策のため、それをやめることはない。
Q:シネマがないのはなぜか?
A:
お客様からの要望が多いが、シネコンは各所にある為お客が分散することになることと、もともとこの地域は工業地域で風俗営業には申請から許可までには1年間かかる。
Q: 各メーカーの展示は?
A:
ショールームといえども商業ベースに乗らないと維持できなくなる。
ロードサイド店は、オイル交換など頻度の高いお客様でも3ケ月に一回だが、トレッサ横浜では週に3回も来る人がいたり、魅力的な店舗にするためには2週間に1回の割合でディスプレーを変えている。
車は、修理;点検が必要であり、ショールームだけでなく、工場も必要
Q:駐車場の面積はどのように決めたのか?
A:
クルマメーカーとしてその点には配慮をした。クルマを入れるための通路の幅や一台当たりのスペースも広く取ってある。
Q:電子マネー活用の試みは?
A:
カード会員をマーケティングに活用。
日本で初めてのチャージの前払いも後払いもできるカードを作成
ポイントは、ほとんど全店でつくようにして、魅力あるカードとした
お得意様イベントも実施(お得意様向けにボジョレーヌーボの会を実施)
売上の半分はカード会員であり、カードでポイントを付けたお客様を名前で呼べるよう指導している。
所感
他のショッピングモールと何が違うのか、差別化コンセプトは何かに興味がありました。自宅近くにもショッピングモールがありますが休日はいつも渋滞が発生しています(だんだんと買い物が面倒になる)。
今回自分なりに感じたのは、「人とクルマと環境とのコミュニケーション」を大切にされ、地域への貢献を企業としてどのようにされているのかを、多少なりとも感じ取ることができました。
周辺地域へ渋滞を極力出さない配慮、クルマのメンテナンスにかかる待ち時間とショッピングとの一体化、平日でもイベントをするなど、お客様を持て成す心と従業員のモチベーションの高さが、好循環を生んでいると思います。まさに「毎日がカイゼンとPDCAを回す」です。
私の住んでいるところからはちょっと遠いのですが、栗原様のお話を聞いた後、是非行ってみたいと思っています。
報告者 30期
石川庄一