1 <はじめに> 本日の聴き手のみなさんは皆消費生活アドバイザーという共通の資格を持っている。一人ひとり自分の求めている何らかの方向がある。そうした皆さま一人ひとりが自分を振り返る機会を作ることができれば幸いである。
2 <自己紹介> カルティエ、コンパック、ヴォーダフォンなど主に消費財の会社で人事を担当してきた。採用(新規採用、中途採用)、人事、企画、管理、業績評価、人材開発、組織開発(これらは前向きの分野と感じます。)、労務(ここではいわゆる首切り役を担当することもありました。)を担当。その後、個人事務所を設立し、人事制度全般に関する制度設計及び運用に関するコンサルテーション、人材育成プログラムの設計と実施を行っている。
3 <キャリアとは> ここでは、「個人が生涯を通じた職業(職業経歴)選択にかかわる活動 態度と「働くこと」にまつわる自由時間、余暇、学習、家族との活動などを含んだ個人の生涯にわたる生き方(ライフスタイル)のプロセス(過程)」と定義している。
(キャリアを大変幅広く捉える。何らかの活動の中でそれをどう磨いてきたかが大切。)
4 <キャリア発達の10段階> エドガー・H・シャインが用いた10の発達段階。その人ごとにこの段階を上がったり下がったりする。人によってその段階にいる期間が異なる。新規採用でなくとも、社内で部門が変わると第1段階に戻ることもある。
第1段階=成長、空想、探求をする。
第2段階=教育と訓練を受ける。(新規採用、新卒は1,2段階にいる。)
第3段階=仕事生活に入る。(例:お客様に接触する。社内で電話をとる。失敗も経験する。
時にはお客さまから理不尽な文句を受けることも、、、。)
第4段階=基礎訓練を受け、仕事になじむ(社会化をくぐる)(例:困った時、自分なりにどうしたらいいか考え、こなしていく。新卒の例でいえば、半年くらいで第3段階から第4段階へと移っていく。その辺がうまくできないとやめてしまう人もいる。)
第5段階=一人前の成員として認められる。(例:自分はこの会社でやっていける!といった気概を持つ。役員だったらここまで大体3カ月。管理職、ベテラン中途採用だったら半年くらいで
あてにされる。役に立つ、、、。)
第6段階=終身雇用権を獲得し、長く成員でいられるようになる。例:この会社はいいや!と感じられる。大体5年、10年くらいの頃。(「この会社でいいや、、」といったネガティブなものではなく。)また、この頃から succession planning
(後継者育成)も考えていく。後継者育成はトップのみならず、様々なポジションで必要。
第7段階=キャリア半ばの危機に自分を再評価する。(例:本当にこれでいいのか、他へ転じるか、ここで続けるか等々。収入、仕事を考え直すというのはかなり大変。)
第8段階=勢いを維持する、回復する、あるいはピークを超える。(例:脂の乗り切った感、また一方では、先が見えてくる。)
第9段階=仕事から引き始める。(例:ライフプランとして今後自分のためにどうしていくかを考えていく段階。スポーツ選手などはサイクルが短く、若いころからこの段階に達する。)
第10段階=退職する。
5<企業が求める人材像> 企業が求める人材像として、ある統計調査の上位5つは@目標に向かって意欲的に行動する人、A自らが問題形成し、提案できる人、B状況の変化に柔軟に対応できる人、C社外にも通用する高い専門能力をもっている人、D広い視野で物事を捉えられる人である。調査でこれより下位になった項目も色々あるが、それらは必要がないのではなく、上位項目の資質を持つ人は出来て当然と企業に認識されている、と捉えると仕事に求められる人材像が一層よく見えてくる。
6<人材の区分> 4パターンに区分できる。(ア)組織での成果に貢献する能力と、(イ)専門的能力により個人で成果を創出する能力という2つを軸に、@儲かる仕組みの中で定型的業務をする人、A儲かる仕組みに専門性を提供する人、B儲かる仕組みを運営し、価値を生み出す人、C儲かる仕組みを創る人の4つに分類できる。この区分のいずれが大事かは状況によって変動する。また、一人の人で4つの区分の要素を合わせ持つ人もいる。
7<継続的な自己成長のために> 持続的な自己成長のためには、・自分の志向することを明らかにする。・発揮できるスキル・能力を確認する。・周囲からの期待はどのようなことか。・自己の強みと能力開発ニーズの把握が必要。
8<GAPSモデル> (ア)自己の見方と(イ)他者の見方、を縦軸、(ウ)現状と(エ)将来を横軸にして、A能力=仕事をやるために用いる知識、技術、スキルなど、G目標と価値観=自分が実現したいことや大切にしている価値観、P認知=日ごろの行動を周囲がどのように受け止めているか、S成功要因=周囲から期待されている成果や達成の水準を考える。
9<自分が大切にしていること・価値観> 自分が大切にしていることや価値観として、自分は・どうありたいか、・どう活躍したいか、・何を得たいかを考えてみる。
10<各自実際にワークシートへ記入> 強みや発揮できる力と、周りの期待とのズレや重なりはどのようになっているかをつかむ。
11<個人のキャリアの推移> 個人のキャリアの推移としては、例えば管理、マネジメント、販売、物流といった分野を横断的な能力と技能を習得していく推移、職務階層を上に上がる推移がある。
12<GAPSモデルの例> 採用などの場合、GAPSモデルのA=自分の現状の能力と、S=他者から期待される将来の成果の結びつきを重視することになる。仮に、例=10年間ずっとある分野の職人をしてきた人がカビの調査研究部門へ応募という場合は結びつき小。例=市場の仕事をしていた人が生産管理部門へ応募という場合は結びつき大といえそうである。また、AとGとSのつながりを重視する。自己が高い評価をしているところは自信を持ってやっていると映るでしょう。
GとSの結びつきも折り合いを良く考える。例=A(現状で)ずっと営業をやっているのに、S(他者の期待で)「人事の仕事をやってくれ。」といった事態等々。やりたいことをやってくれ、と任され、そして、やったことを認められる。これは士気が上がる。例=自分を偽ってある一定の仕事を続ける。しかし、こうした無理をすること、いわば自分に嘘をつくのを3年続けるのは無理。
13<質疑応答>
Q1: GAPSモデルでのPreceptionで他者は自分をどう思っているのだろうか。
A=まわりの人に聞く。ただし、私はどうですか、と聞くとすると周りの人は正直に言ってくれる時も言ってくれない時もある(言いにくい時もある。例えば直上の上司から等)。人から言われても言われなくても、自分がある種の要素、長所・短所等を持っている、ということは往々にしてある。
また、「あなたはこうです」、と言われたときの本人の受け入れ方も様々で「ふざけんな!」といった反応になる場合もある。本人が聞く気を持ってくれないとうまくいかないのでしょうが、言われたときに、驚き→怒り→拒否→受容へと心理的変化が生じ、「でもね、、、ここは、、、」というように本人が受け止めたとき、次の成長へと結びついていく。
Q2: 若手や子供にはキャリアや職務についてどのように話をしていったらよいか。
A=命令や禁止に終始するのではなく、その若手が何を欲しているかを探る。相手との、深い価値観での一致があれば人は一生懸命仕事をしてくれる。
Q3: 目標管理をどう行うか。特にやる気のない人に対して。
A=一例として継続的なコーチングを行う方法がある。目標管理面接>自己啓発をどう行いますか>本を読みます>ではどの本を読む?>一定期間後、どこまで読んだ?次の目標は(本人に提起させる)といった過程の中でいつまでに、、、をやります、という意思を本人から引き出していく、等々。
14<所感>
・近年重視される見える化の推進にも活用可能ではないか。・Logical
thinkingにも通じるものがある。・役割期待の概念に強く関連すると考える。・質問も活発に出た。
議事録作成; 山中治樹 |